請願第12号
平成28年12月6日受理
「高江のオスプレイ着陸帯工事・オスプレイ配備」による環境への影響について、地方自治を尊重する観点から、沖縄県と真摯に協議をするよう、西宮市議会として政府に対し意見書の提出を求める請願
紹介議員 上 田 さち子
河 崎 はじめ
長谷川 久美子
よつや 薫
請願趣旨
沖縄本島の名護市以北にはヤンバルと呼ばれる自然豊かな地域があり、そこには米海兵隊の北部訓練場があります。1995年の米兵による少女暴行事件が引き金となり、それまで鬱積していた沖縄県民の米軍基地に対する怒りが爆発しました。1996年、日米両政府のSACO合意により「沖縄県民の負担軽減」のために基地の統合・整理・縮小が約束され、その1つが北部訓練場の過半の返還です。しかし、そこには、返還条件として新たなオスプレイ着陸帯を6個造ることが明記され、うち2個は昨年完成し、現在残る4個の工事が強行されています。
昨年完成したオスプレイ着陸帯から僅か数100メートルに位置する東村高江は、約
150人が住む小さな集落です。オスプレイ配備に不安を持った高江では、1999年と2006年の住民総会において全会一致で反対決議をしています。これまで政府は、オスプレイ配備に関して一貫して否定し続けてきたにもかかわらず、昨年、高江の上空で突然オスプレイの訓練が始まりました。
高江では、昨年からオスプレイの騒音に悩まされ、夜間の騒音で睡眠不足になった児童が学校を欠席する事態も生まれています。今年7月の参院選後、さらに3地区で4個のオスプレイ着陸帯の建設が始まりました。完成すれば高江は6個のオスプレイ着陸帯に囲まれることになります。オスプレイは騒音だけではなく、低周波音によって心身に大きな影響を与えます。アメリカでは、環境への悪影響を考慮してオスプレイの訓練を取りやめた地域もあります。しかし、高江では民意は聞き入れられず、住民の反対行動も押さえ込まれ、工事が強行されています。
ヤンバルの森には、ノグチゲラやヤンバルクイナなど数多くの固有種や絶滅危惧種が生息しています。2007年の沖縄防衛局による環境アセスによると、現在工事が進められている地区には、2000種を超える動植物が生息し、そのうち希少種は動物97種、植物110種が確認されています。
特に、沖縄県鳥、東村鳥であるノグチゲラは、ヤンバルの森にのみに生息し、国の特別天然記念物に指定され、絶滅危惧種でもあり、文化財保護法が適用されている固有種です。防衛局のアセスでは「自然環境の保全に最大限配慮するとの観点で取り組み、さらなる環境保全の措置を積極的に、適切に実施していく」と記しています。
当初の工事完成予定は2017年9月でした。ところが、突然「年内完成」という政府の方針によって工期は大幅に短縮し、自然破壊が急速に進んでいます。防衛局は、
2007年に自らが作った環境アセスを次々と変更し、沖縄県の要求も無視する形で工事を強行しています。そのため、ノグチゲラの営巣木を含む3万本に及ぶ立木が、当初は手作業のはずが、重機で伐採されています。本来、事業内容を修正する場合は、環境調査の実施からやり直すことがアセス法で定められています。
なぜ、これほどまでの環境破壊をして、工期短縮をしなければならないのでしょうか。
本年9月、ヤンバル地域が「やんばる国立公園」に指定され、環境省は2018年の世界自然遺産登録を目指しています。しかし、国際自然保護連合の「オスプレイ着陸帯を造らずに、登録を目指すべき」との勧告を、日本政府は受け入れていません。生態系保全と環境破壊の両立は不可能です。オスプレイや米軍機の騒音が鳴り響けば、野生動物にとっては楽園どころではなく、生息さえ難しくなります。高江では、オスプレイによるバードストライクで、すでにノグチゲラ5羽の死亡が確認されています。
私たちは、このような高江の状況を見るにつけ、単に沖縄のこととして見過ごすことが出来ません。
住民の叫びに耳を傾けず、国が決めた事には有無を言わせない、高江で起こっていることはまさにそんな国の姿です。「県民の気持ちに寄り添って」「沖縄の負担軽減のために」であるなら、高江の現状に目を向け、住民の声に耳を傾けていただきたいと思います。そして、世界自然遺産にも相当するヤンバルの森とヤンバルに住む絶滅寸前の希少動物を守ってほしいと強く願います。
沖縄のこれまでの選挙では、全て「オスプレイ配備」の是非が問われています。県知事選、衆院選の全選挙区、県議選、7月の参院選等において県民が示した答えは、全て「NO!」でした。また、2013年1月には、沖縄県41市町村長が「オスプレイ配備の撤回」を求めて署名した「建白書」を政府に提出しました。
また、11月11日、沖縄知事、国頭村長、東村村長は、オスプレイを前提とした環境アセスの再実施とオスプレイ配備撤回を求める三者合意を発表しました。県民の民意、高江住民の民意は明らかです。これほど確かな民意が示されたにもかかわらず、国の政治に反映されないなら、「この国に民主主義や地方自治を存在しない」と言っても過言ではありません。私たちの国が、民主主義と地方自治に立脚する国であって欲しいとの願い、それは私たちの住む西宮市が、民意に立脚する市であって欲しいとの強い願いでもあります。
2000年施行の地方自治法改正により、国と地方の関係は、「対等・協力」ということが一層明確になりました。国が地方に関与する場合、地方の自主性、自立性に配慮しなければならないことが謳われました。自治権を侵害する高江での政府の行為は、全国の自治体への介入の先例になりかねません。翁長沖縄県知事は、8月5日の公判で「問題は沖縄だけではない。すべて国の意向で決められるなら、地方自治は死に、日本の未来にぬぐい難い禍根を残す。地方自治と民主主義の根幹が問われている」と述べました。これは、私たち西宮市民の思いでもあります。
私たちの住む国が地方自治と民主主義を守る国であり続けるために、次の事項を政府に求める意見書を提出してくださるよう請願いたします。
請願事項
「高江のオスプレイ着陸帯工事・オスプレイ配備」による環境への影響について、地方自治を尊重する観点から、沖縄県と真摯に協議をするよう、西宮市議会として政府に対し意見書の提出を求める。
請願者 西宮市戸田町
「沖縄によりそう西宮市民の会」
代表 松 谷 卓 人