意見書案第11号 再審法改正に向けた速やかな議論を求める意見書(案)
意見書案第11号
再審法改正に向けた速やかな議論を求める意見書提出の件
上記意見書案を次のとおり西宮市議会会議規則第14条第1項の規定により提出する。
令和7年7月3日提出
提出者 西宮市議会議員 たかの しん
〃 多田 裕
〃 江良 健太郎
〃 大川原 成彦
〃 河崎 はじめ
〃 坂本 龍佑
〃 澁谷 祐介
〃 庄本 けんじ
〃 花岡 ゆたか
〃 松田 しげる
〃 松本 たかゆき
再審法改正に向けた速やかな議論を求める意見書(案)
近年、再審事件の動向に関する報道などにより、再審やえん罪被害に対する社会の関心
が高まり、日本弁護士連合会などからも再審法(刑事訴訟法第4編再審、以下「再審法」
という。)の問題点が指摘されている。本市においても1974年(昭和49年)に起き
た甲山事件では21年7か月にも渡る長期裁判によりえん罪被害者を生み出すこととなっ
た経緯がある。これまで我が国では、憲法に多数の刑事手続関連条項を設け、刑事訴訟法
等の法律を充実させることで、えん罪の発生を防止してきた。しかしながら、ときに誤判
が生じるおそれは払拭できない。現在、誤判により生じたえん罪に苦しむ者やその家族が
救済を待ち望んでおり、速やかな再審法改正が求められている。2014年(平成26年)
に静岡地方裁判所で再審開始決定がなされた袴田事件では、検察官の抗告によって再審開
始決定からその確定まで9年が経過している。検察官の不服申し立てによって、再審請求
審が長期化する事例は多々あり、とりわけ袴田事件についていえば、すでに高齢となった
袴田氏の状況を考えると、審理の長期化は深刻な人権侵害というべきであり個人の人権を
無視し、人生を踏みにじるものである。誤判により有罪判決を受けたえん罪被害者を救済
する再審制度については、刑事訴訟法に規定が設けられているが、再審が認められること
は稀であり、えん罪被害者の最後の砦が再審制度でありながら救済は容易には進んでいな
い。
その要因として、刑事訴訟法の再審に関する規定がわずか19条しか存在しないという
制度上の問題があり、再審請求手続に関する詳細な規定が存在しないために、個々の裁判
体の裁量があまりにも大きいことが指摘されている。その中でも、特に重要な課題として、
再審請求手続において証拠開示規定が存在しないこと、再審開始決定に対する検察官の不
服申立てにより審理が極めて長期化していること、再審請求手続における手続規定が整備
されておらず、請求人の手続保障が十分になされていないことの3点がある。このうち、
再審請求手続における証拠開示については、刑事訴訟法等の一部を改正する法律
(2016年(平成28年)法律第54号)の制定過程において、再審請求手続における
証拠開示の問題点が指摘され、同法附則第9条第3項において、政府は同法の公布後、必
要に応じて速やかに再審請求手続における証拠の開示等について検討するものと規定され
ているにもかかわらず、今なお制度化は実現していない。また、再審開始決定に対する検
察官の不服申立てについては、不服申立てによって更に審理が長期化し、えん罪被害者の
救済が遅延することが指摘されている。そして、再審請求手続における手続規定に関して
は、再審法に規定が少なく、とりわけ審理の在り方については、裁判所の広汎な裁量に委
ねられている。そのため、裁判所の訴訟指揮により大きな差が生じうるため、再審請求手
続における手続規定を整備する必要があるとの意見もある。再審制度を整えることは、え
ん罪に苦しむ人々を救う唯一の手段であることを考えると、一刻も早く、法整備を行うこ
とが必要である。
よって、国におかれては、えん罪被害者を迅速に救済するため、再審法改正に向けた議
論を速やかに行うよう強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年7月 日
西宮市議会
(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
法務大臣